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【事業アイデアの創出#05】アセットドリブンで発想する

本シリーズでは7回に渡って、事業アイデアの創出について手法や事例をご紹介いたします。


・新規事業創出について検討したいが、どこから始めればいいかわからない

・新規事業チーム内の共通認識を作りたい


といった方々のお役に立てますと幸いです。


本シリーズ・事業アイデアの創出に関する記事の一覧


アセットドリブンなアイディエーションとは

ここからはアセットドリブンなアイディエーションについて考えていきましょう。アセットドリブンなイノベーションとは、前章で説明したように、自社や組織がすでに持っている技術や知財などのアセット/資源やリソースからアイデアを着想する手法です。



アセットドリブンなアイディエーションでは、一般的には下記のような進め方になるでしょう。




まずは自社のアセットを洗い出し、アセットが持つ価値をさまざまな角度から再定義していくことで、これまで焦点が当たっていなかった価値や機会を発見していきます。こうした手法では、競争優位性を築きやすい、自社のアセットを活用するため開発スピードが速いといったメリットがあります。


アセットドリブンなイノベーションの事例として、FUJIFILMのアスタリフト、iRobotのルンバの2つの事例をご紹介します。



アセットドリブン・イノベーション事例:FUJIFILM


まずFUJIFILMの事例をご紹介します。FIJIFILMのアスタリフトは、カラーフィルムの世界需要が2000年にピークを迎え、以降デジタルカメラの出現によって急激に市場が縮小することを予測し立ち上げられたFUJIFILMの化粧品・サプリメントの新規事業です。



当時のFUJIFILMが写真フィルム製造のために培った高度で精密な技術は、世界でたった4社しか保有していない他社が追随しがたい技術でした。


そうした技術力、特にフィルムに用いられるコラーゲンの開発や、その劣化を防ぐ抗酸化技術、フィルムを紫外線から守る光解析コントロールの技術などを化粧品に転用することで新たな事業領域を開きました。

アセットドリブン・イノベーション事例:iRobot


つぎにiRobotの事例をご紹介します。IRobotの代名詞商品であるルンバは、家庭用のロボット掃除機として有名ですが、その出自が地雷探査・除去ロボットであったこともまた有名です。


1990年に設立された同社は政府や公的機関からの委託研究を中心に手がけており、1996年に水陸両用地雷探査・除去ロボット「Arie(アリエル)」を開発しています。次いで1997年に開発された陸地の地雷探査・除去ロボット「Fetch(フェッチ)」には、紛争地域の同じ場所を何度も行き来して地雷の見落としを防ぐ人工知能を搭載しており、この技術が応用され、ロボット掃除機・ルンバの人工知能のプロトタイプとなったことで、現在のルンバというイノベーティブな製品に至りました。 




こうした事例から、アセットドリブンなアイディエーションでは自社の技術や強みを理解し、その技術を別の市場やユースケースに適用することで新たな事業創出の機会を得ることができるということがわかります。技術を多様な視点で観察し、新たな機会に適用するために柔軟な発想が求められます。


機会を発見するクロスSWOT


では、そうしたアセットドリブンなアイデアや事業機会はどのように発見できるのでしょうか?

漏れなく機会を発見する手法として、前章で触れた「組み合わせ発想」を活用した「クロスSWOT」をご紹介いたします。SWOT分析は自社の強み、弱み、外部環境のチャンス、リスクをリストアップし分析を行うものですが、クロスSWOTではさらにここで明らかになった強みや弱み、チャンスやリスクをそれぞれ組み合わせることで、漏れのない示唆出しを可能にします。



まず事実情報をSWOT分析で整理し、その組み合わせを検討するような形で進めていきます。例えば、強みを「印刷技術の高さ」「営業販売力の高さ」とし、チャンスを「D2Cブランド・マイクロブランドの広がり」「少子高齢化」とすると、クロスSWOTではこれらを順に掛け合わせることによって、どのような機会を発見できるか、掛け算を繰り返すことで新しいビジネス機会や既存事業の改善可能性を検討していきます。


 こうしたアイデア創出の際に重要なことは、前章でも触れた通り、可能な限り多くのアイデアを出すことです。多数のアイデアを出すことで、その中に「アタリ」が一定の確率で含まれていると考えられます。諦めずにアイデアを出すこと、そのためにチームで実践することはアイデア創出において非常に重要です。


次回:コンペティター・ビジョンドリブンで発想する


次回は「コンペティター・ビジョンドリブンで発想する」についてご紹介させていただきます。


 

【参考書籍】

 ・秦充洋『事業開発一気通貫 』日経BP出版、2022年・北嶋貴郎『新規事業開発マネジメント』日本経済新聞出版、2021年

・前野隆司 『システム×デザイン思考で世界を変える 慶応SDM「イノベーションの作り方」 』 日経BP出版、2014年


・ロベルト・ベルガンティ 『デザイン・ドリブン・イノベーション 』クロスメディア・パブリッシング、2016年

・ロベルト・ベルガンティ 『突破するデザイン あふれるビジョンから最高のヒットをつくる 』日経BP出版、2017年


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