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【事業アイデアの創出#01】事業アイデアを創出するチーム・方向性

本シリーズでは7回に渡って、事業アイデアの創出について手法や事例をご紹介いたします。


・新規事業創出について検討したいが、どこから始めればいいかわからない

・新規事業チーム内の共通認識を作りたい


といった方々のお役に立てますと幸いです。


本シリーズ・事業アイデアの創出に関する記事の一覧


多様性のあるチームで取り組むことの重要性


事業アイデアの創出に向けて、多様性のあるチームで取り組むことは非常に重要です。特に専門性が高い場合や、特定の技術領域を専業とする企業においては様々な意見を意識的に取り入れることが推奨されます。専門性の罠を説明するため、「インビジブル・ゴリラ」という名称で名高い、ヒトの心理・注意力実験についてご紹介いたします。



この実験は、ハーバード大学医学大学院・ブリンガム&ウーマンズ病院で行われました。放射線科の技師24人に、肺のCT画像・5枚を見せ、腫瘍を発見するというタスクを課しました。技師の多くは指示通りに問題のある写真と腫瘍箇所を示すことができましたが、写真の中に48回も表示されていた腫瘍よりも大きなゴリラの絵を発見することができませんでした。毎日、大量の情報を受け取る専門家は、効率的にものを見ようとしてこのゴリラでさえ見落としてしまうこということがわかります。




この実験から、専門性や同質性の高いチームが持つ無意識のバイアスや、注意の欠陥に対する示唆を得ることができます。また、同じ組織の同質性の高いチームでプロジェクトを推進するチームにおける経路依存性(=ロックイン効果)が発生することもわかっています。ロックイン効果はイノベーションの機会に対し、認識や視野を狭めてしまう危険性があります。


下記の図は、ハーバードビジネスレビューに掲載された論文から引用したものです。



多様なメンバーで構成されるチームと、均一で同質性の高いメンバーで構成されたチームを作り、それぞれのチームに出させた新しいアイデアを比較したものです。イノベーティブかどうかという視点から「アイデアの質」を評価したところ、多様なメンバーよりも均一なメンバーのほうが平均点が高いと言う結果になりました。これは、多様なメンバーがいるとアイデアの質のばらつきが多くなり、よくわからないアイデアや的外れなアイデアが増えるからだと考えられます。ただし、多様なメンバーは、数は少ないながらも飛びぬけて優れたアイデアを生み出します。こうしたアイデアこそ、イノベーションの鍵となるものです。


こうした研究や実験から分かることは、ある分野の専門家ばかりで発想した場合にはそれなりにまとまった「良いアイデア」が生み出されますが、飛び抜けて優れたアイデアはうまれにくいということです。そのため同質性の高いチームだけではなく、様々な価値観やバックグラウンドを持った多様なチームを組成し、コラボレーションを行うことがイノベーションにおいて大変重要であると考えることができます。



新規事業開発における4方向のアイディエーション


ここからは、新規事業におけるアイディエーション、アイデア発想についてご紹介していきます。 まず、アイディエーションにおいては図のように4つの方向性があることを理解し、プロジェクトキックオフの時点でチーム内の認識を合わせておく必要があります。4つの手法をマーケットドリブン、アセットドリブン、ビジョンドリブン、コンペティタードリブンと定義しご紹介します。 



①はデザイン思考的なアプローチといえます。 顧客は何を本当に求めているのか? 何に困っているのか? をリサーチやヒアリングで深掘りしながら商品やサービスのアイデアを発想します。マーケットドリブンなアプローチは顧客の本質的なニーズを捉えやすく、ヒット商品につながりやすいといわれています。 また自社で多くの顧客を抱えており、ヒアリングや調査を実行しやすい場合にもおすすめです。 


②は自社や組織がすでに持っている技術や知財などのアセット/資源やリソースからアイデアを着想する手法です。競争優位性があり、かつ実現性の高いアイデアが生まれやすいメリットがありますが、一方でソリューションの幅があらかじめ規定されるため、アイデアの幅が広がらない、既存市場のよりニッチな領域しか獲得できない、などのデメリットもあります。 


③は将来こうありたいという理想像や企業のビジョンからアイデアを着想していく手法です。新規事業開発においては「私たちがこの事業をやるべき理由」も重要です。ビジョンドリブンな事業開発においては、企業の理念をもとに、将来のあるべき姿からバックキャスティング思考でビジネスを検討していきます。アート思考やSF(サイエンスフィクション)思考といった比較的新しい手法が有効な領域でもあります。 


④は、競合サービスを分析したり、既存事業の横展開などをヒントにアイディエーションを進めていく手法です。例えば、すでにあるサービスの一部を改良したり、マーケットや対象ユーザーを少しずらしてみたり、他国ですでに展開されているサービスを改良してみるなどの事業展開が対象になります。こうしたコンペティタードリブンのアイディエーションは、入念なマーケットリサーチや、特定分野の専門家、またはエバンジェリストユーザーへのインタビュー、調査などによってアイデアの種を得ることができます。


アイディエーション前の準備


次回は「アイディエーション前の準備」についてご紹介させていただきます。


 

【参考書籍】

 ・秦充洋『事業開発一気通貫 』日経BP出版、2022年・北嶋貴郎『新規事業開発マネジメント』日本経済新聞出版、2021年

・前野隆司 『システム×デザイン思考で世界を変える 慶応SDM「イノベーションの作り方」 』 日経BP出版、2014年


・ロベルト・ベルガンティ 『デザイン・ドリブン・イノベーション 』クロスメディア・パブリッシング、2016年

・ロベルト・ベルガンティ 『突破するデザイン あふれるビジョンから最高のヒットをつくる 』日経BP出版、2017年

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