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【事業アイデアの創出#03】アイディエーション

本シリーズでは7回に渡って、事業アイデアの創出について手法や事例をご紹介いたします。


・新規事業創出について検討したいが、どこから始めればいいかわからない

・新規事業チーム内の共通認識を作りたい


といった方々のお役に立てますと幸いです。


本シリーズ・事業アイデアの創出に関する記事の一覧



アイディエーションとは


アイディエーション自体はプロジェクトのどのようなフェーズでも取り入れられます。事業開発において「まだ顧客が特定できていない」「機会が発見できていない」場合でも、様々な目的に沿って実施可能です。ここでは代表的なアイディエーション手法をご紹介いたします。 

アイディエーション手法①ブレインストーミング


1つめはブレインストーミングです。


ブレインストーミングは、創造的な問題解決やアイデアの発想に用いられる手法です。多数の人が自由にアイデアを出し合い、議論することで、新しい視点や発想を生み出すことを目的としています。アイデアの批判や否定はせず、とにかく多くのアイデアを出すことが重要です。また、時間制限を設けることで、より創造的なアイデアを生み出すことが期待できます。


アイディエーション手法②親和図法

2つめは新和図法です。


新和図法はアイデアやトピック、キーワードをグループ分けし、意味を可視化するためのフレームワークです。複数のアイディアが出たら、意味が近いものをカテゴリ分けして名前を付けながら分類していきます。


アイディエーション手法③バリューグラフ


3つめは、バリューグラフです。



バリューグラフとは、スタンフォード大学の故石井浩介教授らによって開発された価値工学の手法です。もともとは、製品やサービスの目的や価値(バリュー)を構造的に可視化し、アイデアの幅を広げるために用いられる手法です。事業領域に対する理解を広げることにも適用できます。


上図は、Appleの開発チームが自社のパーソナルコンピュータ「Macintosh」に搭載する空冷ファンの価値について議論した際に作成したバリューグラフです。「空冷ファン」を起点とし、空冷ファンを搭載する「目的」は空気の流れをつくること、空気の流れをつくる目的は熱を除去すること、といったように、なぜそうするのか?を繰り返し考えていくことで、「信頼性を向上させ長寿命を実現」という最上位の目的(本質的な価値)を導き出します。


上位の目的を設定する際に、その目的を実現する代替手段を検討します。たとえば、空気の流れをつくるという目的に対しては、空冷ファンの他に「対流を発生させる」という手段が考えられます。熱を除去するという目的に対しては、空気の流れをつくる以外に「水で冷やす」という手段が考えられます。

このように考えていくことで、本質的な価値の達成には空冷ファンのほかにさまざまな選択肢があることが分かり、たとえば「高性能なチップにする」ということでも良い、と考えることができます。より上位の目的は、下位の目的を抽象化することで導かれ、逆に下位の目的は、上位の目的を具体化することで導かれる関係にあります。


起点となるキーワードを事業領域を表す言葉に設定すれば、その事業領域に取り組む本質的な目的を考え、他に取りうる手段を含めて俯瞰的に分析することができます。バリューグラフは、どこを起点にするか・何を起点にするかによって様々なアイデア創出に活用できます。



アイディエーション手法④組み合わせ発想


4つめは、組み合わせ発想です。組み合わせ発想はイノベーションを生み出す重要かつ再現性の高いアプローチです。組み合わせ発想の基本的な手法は「A」と「B」を組み合わせて新たなアイデアを創出するという単純なものですが、実際にヒットした商品やサービスを組み合わせ手法を用いて分解すると、背後に様々なパターンがあることがわかります。



組み合わせ発想のパターンは様々ですが、特に注力したいのは新しく高価だったものが安価になることで「普及したインフラや技術」と、既存の「業界や市場」を組み合わせるバターンです。ここでいう「普及したインフラや技術」とは、世の中に広く普及して他の用途にも使えそうな製品やサービス、技術や人材なども含みます。現在多くの人が利用しているインターネットやスマホ、Google検索やyoutube、Amazonマーケットなどは情報や物流のインフラと呼ぶことができます。今後普及が期待される人工知能や自動運転技術などの技術も現時点の有望な候補です。


それらと既存の業界や市場の組み合わせは、新しい事業につながるアイデアを最も発想しやすいパターンであるといえます。これは任天堂でゲームボーイを開発した技術者・横井軍平氏が記した技術のリサイクル論として有名な「枯れた技術の水平思考」にもつながる発想法で、様々な技術やマーケットに応用することができます。


ご紹介した4つの手法以外にもさまざまなアイディエーション手法がありますので、ぜひチームで試してみてください。



繰り返しとアイデアの質


アイディエーションのプロセスでは、図のように「なるほど!」「しまった!」を繰り返すことが重要です。



一般的な会議や開発ではそれなりによいアイデアが出ると、それを改良することが推奨されがちですが、新規事業創出のアイディエーションでは、現行のアイデアに問題が生じたら、別のアイデアを探す姿勢が重要です。


「しまった!」というタイミングがいつ生じるかというと、アイデアを検証していく中でそもそも顧客のニーズを特定できなかったり、全く同じ製品やサービスがすでに存在することを知った時です。問題が見つかったら、すぐにゼロからでもアイデアを考え直す潔さが重要です。


マーケットドリブンで発想する


次回は「マーケットドリブンで発想する」についてご紹介させていただきます。


 

【参考書籍】

 ・秦充洋『事業開発一気通貫 』日経BP出版、2022年・北嶋貴郎『新規事業開発マネジメント』日本経済新聞出版、2021年

・前野隆司 『システム×デザイン思考で世界を変える 慶応SDM「イノベーションの作り方」 』 日経BP出版、2014年


・ロベルト・ベルガンティ 『デザイン・ドリブン・イノベーション 』クロスメディア・パブリッシング、2016年

・ロベルト・ベルガンティ 『突破するデザイン あふれるビジョンから最高のヒットをつくる 』日経BP出版、2017年

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