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【事業創出に向けたリサーチとアイデアの評価#01】新規事業創出におけるリサーチ

本シリーズでは2回に渡って、事業創出に向けたリサーチとアイデアの評価についてご紹介いたします。


・新規事業創出について検討したいが、どこから始めればいいかわからない

・新規事業チーム内の共通認識を作りたい

・事業創出にあたりどのようなリサーチを行えばいいかわからない

・事業アイデアをどのように評価すればいいかわからない


といった方々のお役に立てますと幸いです。


本シリーズ・事業創出に向けたリサーチとアイデアの評価に関する記事の一覧


新規事業創出におけるさまざまなリサーチ


新規事業創出においては、アイデアを拡げたり仮説を検証したり、多くの場面でリサーチを実施する機会があります。リサーチそのものにも多様な目的と手段がありますが、大枠として「発散」と「収束」の目的があることをお伝えしておきたいと思います。



デザイン思考の重要なプロセスの概念であるダブルダイヤモンドを用いると、アイデア発想や製品やサービスの開発はこうした「発散」と「収束」を繰り返す取り組みとして表現が可能です。 新規事業創出におけるリサーチの役割としては「発散=アイデアを広げる」「収束=アイデアを絞り込む」と考えることができ、前章でご紹介したプライマリーリサーチはアイデアを広げるためのリサーチといえます。


アイデアを広げた後は、取り組むべきアイデアを決定するための評価を行うため「アイデアを絞り込む」リサーチが必要となります。ここからは、こうした発散・収束に活用できるリサーチをご紹介いたします。


定量調査と定性調査


新規事業開発に向けたリサーチ、調査において「定量調査」と「定性調査」を使い分けることは非常に重要です。それぞれ次のような特徴があり、異なる手法を用います。 



まず定量調査では、数や割合、業界全体の状況を把握します。統計的データなどもこちらに含まれます。調査手法としてはネットなどでのアンケート調査、アクセス分析、ABテストなどがあります。一度に多くのユーザーや顧客に実施し、収集した情報の数量をもとに分析します。定量調査におけるサンプル数は許容誤差や信頼度を設定し実施する必要があります。母集団の設定も分析時に重要な指標であるため、目的に沿った設定のうえ実施してください。 


次に定性調査では、アンケートなどの質問や選択肢に乗らない情報や、数値化・言語として表出しづらい情報などを探ります。調査手法としては観察法、質問紙法、実験法、面接法などがあり、インタビューやヒアリングは面接法に類します。フィールドワークや行動観察はこのうちの観察法に分類され、参与観察や行動観察がそこに含まれます。観察法から生まれた有名なプロダクトとして、無印良品の歯ブラシスタンドや、ノズルが折れるシャーク掃除機などが挙げられます。



いずれもユーザーの生活現場や行動を観察することで生まれたイノベーティブなプロダクトです。 プライマリーリサーチで行う場合は機会発見を目的とするための定量調査を軸とし、セカンダリーリサーチではユーザー個別の情報を把握するため定性調査を軸に行うなど、それぞれプロジェクトのフェーズやその目的に沿った手法を選択する必要があります。 


環境の変化を理解する・PEST分析


PEST分析は、組織の戦略策定や新規事業開発において、外部環境を評価するためのフレームワークです。PESTは、政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の頭文字を取っており、これら4つの側面から外部環境の影響を分析します。PEST分析を通じて、事業の機会やリスクを特定し、競争力を向上させる戦略を立案することが可能です。



 ①P-Politics:政治的観点では、政府の政策、法律、規制、政治の安定性などを検討します。これらの要因は、事業活動に影響を与えるため、適切な対応策を考慮する必要があります。 


②E-Economy:経済的観点では、経済成長、インフレ率、失業率、為替レート、消費者信頼感などを調査します。これらの要因は、市場の需要や販売、コスト構造などに影響を与えるため、事業戦略に反映させることが重要です。


 ③S-Society:社会的観点では、人口動態、文化、価値観、教育、生活水準などを分析します。これらの要因は、顧客のニーズや市場のトレンドに影響を与えるため、事業の成長や革新に対応するために検討すべき項目であるといえます。 


④T-Technology:技術的観点では、技術革新、研究開発、デジタル化、インターネット普及率などを評価します。技術の進歩は、新たな市場機会や競争優位性を生み出す可能性があるため、事業戦略に取り込むことが望ましいです。 



こうしたPEST分析を行うことで、事業に影響を与える外部要因を包括的に把握し、事業戦略やリスク管理に役立てることができます。また、PESTELやPESTLEといったバリエーションが存在し、環境(Environmental)や法律(Legal)要因を追加した分析が行われることもあります。このほか3C分析、フォース分析なども外部要因把握に有効です。 


他業界の成功事例や傾向を調査する


次に「他業界の成功事例や傾向を学ぶ」です。他業界の成功事例や傾向から、自社の事業領域につながる機会を発見することができます。


例えば、自動車業界をはじめとした製造業全体の大きな課題であるカーボンニュートラルへの取り組み、急速に進むAI活用や物流サプライチェーンの変化、Web3やメタバース領域の事業活用など、こうした変化は一つの閉じられた業界にとどまらず周辺のビジネスに影響を及ぼすものです。こうした他業界の傾向をキャッチしておくことはアイデア創出や機会発見に非常に有効です。 



さらに新規事業創出における「成功事例」についても情報収集しておくことは、アイデア創出以降のフェーズによい影響をもたらします。事例から学習したい内容としては事業自体の5W1Hを網羅しつつ、特に「成功要因はなんだったのか?」についてです。マーケティングが功を奏したのか、参入市場や時期が適切だったのか...事例の収集はチーム全員で行い、特に興味深い事例についてはディスカッションしてみるのも学習においては効果的です。他業界の傾向や成功事例については、毎年様々な書籍が出版されておりますのでデスクリサーチの一環としてぜひご活用ください。


自社の事業領域を深掘って調査する


もちろん自社事業領域の深掘りも、新たな機会創出や既存事業の拡大において有効です。ここでも様々な調査の方向性がありますが、特に下記の領域に注意するのが良いでしょう。



 ①顧客層の変化:既存顧客の年齢や性別、居住地、LTV(Life Time Value)など顧客属性に推移的変化が起こっていないかということです。例えば10年前にローンチした事業やサービスに当時20歳代のユーザーがついていた場合、10年後たった現在、顧客は30代になっています。顧客全体に対して新陳代謝が起きているのか、ローンチ時の顧客が主要なのか、そうした推移や変化を把握し仮説を立てておくことは機会発見に対し有効です。 


②技術の変化:現代ではあらゆる技術が急速に進化しています。調査時に注意したいのは自社の技術領域において「新たな特許や技術論文が発表されていないか」「他業界が自社事業領域の技術を活用し始めていないか」「技術と市場の新たな組み合わせが生まれていないか」という点です。

これらは定期的に調査を行っている企業も多いので、そうした調査部門との連携にて情報を得てくのがおすすめです。


次回:アイデアを評価する


次回は「アイデアを評価する」についてご紹介させていただきます。


 

【参考書籍】

 ・北嶋貴郎『新規事業開発マネジメント』日本経済新聞出版、2021年

・秦充洋『事業開発一気通貫 』日経BP出版、2022年


・ボストンコンサルティンググループ『BCGが読む経営の論点2023』日本経済新聞出版、2022年

・ピーター・ディアマンディス 他『2023年すべてが「加速」する世界に備えよ』ニュースピックス出版、2020年

・ヘイミシュ・マクレイ『2050年の世界 見えない未来の考え方』日本経済新聞出版、2023年

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