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【方向転換・探索と適応#02】方向転換・ピボット②

本シリーズでは3回に渡って、新規事業創出における方向転換や探索と適応に向けた取り組みについてご紹介いたします。


・新規事業創出について検討したいが、どこから始めればいいかわからない

・新規事業チーム内の共通認識を作りたい

・新規事業創出にあたる検証活動を理解したい

・探索活動の位置付けや方向性を知りたい


といった方々のお役に立てますと幸いです。


本シリーズ・新規事業創出における方向転換・探索と適応に関する記事の一覧



※本記事は#01の後半となります。



ピボットの型⑥Business architecture pivot(ビジネスモデル・ピボット)とDropbox


ビジネスモデル・ピボットは、検討しているビジネスモデルを変更することです。たとえば「高利益・低ボリューム」から「低利益・高ボリューム」に変更するか、もしくはその逆を行う手法です。多くの場合「高利益・高ボリューム」を同時に追求することは、大変難易度が高いためご注意ください。



ビジネスモデル・ピボットの事例として、クラウドストレージサービスのDropboxを挙げることができます。Dropboxは現在でも個人向けのクラウドストレージサービスを提供していますが、法人向けのサービスに収益化のフォーカスを移しています。これは「低利益・高ボリューム」から「高利益・低ボリューム」へのピボットです。


ピボットの型⑦Value capture pivot(収益モデル・ピボット)とAdobe

収益モデル・ピボットは、広告収益、フリーミアム、手数料など、レベニューの発生方法を変更する手法です。ビジネスモデル・ピボットと似ていますが、ビジネスモデル・ピボットがビジネス全体の構造を方向展開するのに対し、収益モデル・ピボットでは顧客に対する課金方法などを扱います。

 

収益モデルピボットの例として、イラストレーターやフォトショップなどのクリエイティブソフトを提供するAdobeの事例をご紹介します。AdobeではもともとソフトウェアDVDを販売する、ボックス・パッケージの売り切りモデルでしたが、2012年Creative Cloudというオンラインサブスクリプションモデルへ移行しました。



ボックスパッケージモデルでは、製品が高額であるため顧客が新しいバージョンへ切り替えないなどの課題がありましたが、サブスクリプションモデルへの移行を成功させたことから、Adobeは大きく事業成長を遂げました。



ピボットの型⑧Channel pivot(チャネル・ピボット)とジャンプ+


チャネル・ピボットは、「販売チャネル」と呼ばれる販売経路または流通経路を変更する手法です。訪問販売をネットショップに変更する、紙の書籍をデータ販売に変える、店舗販売からデリバリーに変える、といったピボットが該当します。


チャネルピボットの事例として、デジタル漫画プラットフォームであるジャンプ+をご紹介いたします。ジャンプは、ドラゴンボールやワンピース、ナルトといったグローバルでも人気の高い漫画作品を生み出してきた週刊漫画雑誌です。紙媒体である週刊少年ジャンプから、チャネルを、Webやスマートフォンアプリケーションにピボットした漫画作品のプラットフォームがジャンプ+です。



ジャンプ+では紙媒体からのチャネル変更により可能になった、アクセス解析やSNSとの連携、過去作品のリバイバル連載などさまざまな取り組みが行われ、本誌である週刊少年ジャンプに劣らず、デジタル発で多くの人気作品を生み出すことに成功しています。チャネルピボットでは、ピボット先のチャネル特性をいかに活用できるかという観点が重要です。


ピボットの型⑨Technology pivot(テクノロジー・ピボット)とGoogle


テクノロジー・ピボットは、その名の通り、従来用いていた技術と別の技術を採用し、同じ価値を持つ製品やサービスを実現する手法です。フィルム写真からデジタル写真への変更や、人間のオペレーターがチャットボットやAI応答に代替されるなどがケースとして該当します。 


テクノロジー・ピボットの事例としては、Googleを挙げることができます。Googleはインターネット関連のサービスと製品に特化したアメリカの企業で、世界最大の検索エンジンや地図情報を提供しています。Googleの創業者であるラリーペイジはスタンフォード大学で、インターネットの大量のデータから必要な情報を抽出する方法について研究しており、「ページランク」というGoogle独自の概念を編み出しました。それはWebページが重要かどうかをアルゴリズム用いて判定し、検索されたワードに対して関連性が高いか・情報の重要性が高いかという観点で順位表示ができるというものです。



Googleが創業した1998年当時インターネットにはすでに大量の情報があり、必要な情報を見分けるために時間もお金もかかっていました。アルゴリズムを搭載したGoogle検索エンジンの登場により、利便性が向上し、より多くの人がインターネットを利用する機会を生み出しました。このように人間が払っていたコストをテクノロジーで代替するという観点も、テクノロジー・ピボットとして考えることができます。 



期限とコストを定める


ここまで見ていただいたようにピボットにはさまざまな型と視点がありますが、こうした取り組みは延々と続き、終わりがないように感じられます。スタートアップ企業であれば資金ショートなど明確なデッドラインがありますが、創業者の意思が固ければピボットを繰り返しながら10年でも20年でも探索活動をすすめることになるかもしれません。 


また、企業内での新規事業創出の場合も、成果の出ないプロジェクトに対し「始めたもののいつ終わればいいのか」と泥沼化するケースは少なくありません。



そのため、ピボットを続けるのか、プロジェクトを立て直すのか、クローズするのか、といった判断に迫られることもあるのではないでしょうか。新規事業創出のプロジェクトに対しては、事前に明確な期限やコストの設定を行い、ここまでの成果と照らし合わせ、経営陣を含めた継続可否の判断タイミングも全体のロードマップに加えておく必要があるでしょう。


次回:新規事業創出における「探索」と「適応」

次回は「新規事業創出における「探索」と「適応」」についてご紹介させていただきます。


 

【参考書籍】

・秦充洋『事業開発一気通貫 』日経BP出版、2022年

・エリック・リース 『リーンスタートアップ』日経BP出版、2012年

・シンディ・アルバレス『リーン顧客開発』オライリージャパン、2015年

・アッシュ・マウリャ『リーンスタートアップ成長戦略』 日経BP出版、2017年

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