PERを押し上げる「IRナラティブ」設計 3つの原則
- SAKI Tsujihara
- 19 時間前
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株価は、収益力を示すEPS(1株あたり利益)と、将来への期待値を反映するPER(株価収益率)の掛け算で決まります。EPSを積み上げる努力は当然として、企業価値をより正しく伝え、適切な市場評価を得るには、投資家から期待を寄せていただく取り組みや情報発信も重要です。

経営者の多くはEPSのコントロールや発信に向けて多くの注意を払いますが、残念ならがPER=投資家の期待値を左右する"IRの物語設計"には十分に着目できていないことが多いのが実情です。
本稿では、株価評価を高めるIRストーリーを設計するうえで欠かせない3つの原則と、その実践ステップについてご紹介していきます。
原則1|存在意義(Why)から語る
投資家は「なぜこの会社が必要なのか」に投資する
効果的な会社説明は「シンプルで理解しやすく、主要なテーマに沿って行う」必要があります。具体的には次のような内容を投資家に伝え、自社の存在意義への理解を促すことが重要です。
社会の課題や市場の変化を数字で示す
自社の価値提案を「大きな時代の流れ」と結びつける
例)再生可能エネルギー企業A社は、二酸化炭素排出量と今後の規制強化の見通しを先に示し、市場が今後どれだけ広がるかを数字で分かりやすく説明
会社の「使命」だけを語るのではなく、「世の中の変化」×「自社ができること」で説明することができれば、さらに説得力が増すと考えられます。例えばテスラは長年赤字でしたが「環境改善」という大きな目的から始めることで、将来の成功への期待を高め、投資家を惹きつけ資本を集めることに成功しています。
原則2|競争上の強み(How)の明確化
「稼ぎ続ける力がある」ことを示す
投資家との対話では、単に決算の数字を見せるだけでなく、会社の強みや課題を具体的に説明することが重要です。強みだけでなく課題も示しながら、その課題をどのように解決しようとしているのかを説明することによって、投資家との信頼関係構築につながります。
具体的には、次のような情報を投資家との対話で伝えていく必要があります。
優位性を「独自技術/顧客基盤の広がり/参入障壁」など具体的に説明する
事業の流れの中で、どこで利益を生み出すのかを図で示す
計画上障壁となる課題を事前に把握し、課題解決の道筋を示す
競合との比較は、財務数値だけでなく「人材の質」「特許の数」などの非財務指標も加える
原則3|成長ストーリー(Then)を具体的に示す
PERは「将来のお金の流れ」への期待度
効果的な会社説明は、測定可能で時間とともに追跡できる具体的な指標で裏付けられる必要があります。そのためには戦略とともに具体的な成長ストーリーを示すことが重要です。
3~5年の期間で達成する重要指標(売上成長率、定期収益など)を設定する
中期計画を「投資家向けのストーリー」に変換し、3ヶ月ごとの達成目標を示す
「楽観的シナリオ/基本シナリオ/慎重シナリオ」の3つを明確に提示する
提示ストーリーは「お金の使い方」「配当の方針」「投資家向け広報活動」が一貫しているか?を何度も見直すことが重要です。単に会社の戦略を説明するだけでなく「なぜその戦略が株主価値の向上に寄与するのか」を語り、長期的な投資家を引きつけ、維持することに力を入れるべきです。
実践ステップ(まとめ)
情報収集と戦略設計:市場環境と自社の強みを集め、戦略を検討する
原則に従ったナラティブ設計:Why / How / Thenの一貫した説明
数字との連携:重要指標と資金の使い方を一致させる
資料作成:決算資料・IRサイト・会社報告書に反映させる
定期見直し:3ヶ月ごとに投資家の期待との差を確認し改善する
効果的な投資家向け活動は、投資家が会社のお金の状況、事業の方向性、将来の見通しを明確に理解できるようにすることで、株主価値を高めます。これにより株価や市場からの評価にプラスの影響を与えることができると考えられます。
PERを高めるとは「期待を丁寧に設計すること」
PERはマーケットが企業に向ける「将来への期待値」です。そして期待は、丁寧に設計され、語られ、理解されたときにこそ評価に変わります。投資家に信頼される企業になるために、「語る力」こそ、次の株価を決めるレバレッジです。ぜひご紹介した原則を軸に、IR活動をチェックしてください。
企業価値向上を実現する戦略的IR支援プログラム「Design for IR」
私たちILY,では、企業価値向上を実現する戦略的IR支援プログラムを提供しています。単なるIR資料の制作ではなく、PERを押し上げるためのナラティブ設計/投資家との関係性のデザイン/統合されたIRコミュニケーション戦略 / IR部門の立ち上げまで、一貫して支援しています。
IRナラティブ設計:投資家の期待を引き出すストーリーラインの構築
IR資料・統合報告書制作:決算説明・ESGなど非財務との整合性も重視
IRサイト・ブランドツールの最適化:対話の第一印象を高めるクリエイティブ設計
伴走型の改善支援:IRチームやCFOとの継続レビュー・改善プロセスを支援
IR活動にお悩みがある方、資料の伝わり方に課題を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。