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【カスタマープロブレムフィット#01】新規事業創出における検証と顧客開発

本シリーズでは3回に渡って、新規事業創出における検証と顧客開発、カスタマープロブレムフィットに向けた取り組みについてご紹介いたします。


・新規事業創出について検討したいが、どこから始めればいいかわからない

・新規事業チーム内の共通認識を作りたい

・新規事業創出にあたる検証活動を理解したい


といった方々のお役に立てますと幸いです。


本シリーズ・新規事業創出における検証と顧客開発、カスタマープロブレムフィットに関する記事の一覧



4つの検証とタイミング


新規事業創出において、主に4つ検証しなければならない項目があり、それぞれ検証すべきタイミングがあります。 



まず1つめはカスタマープロブレムフィット(CPF)、本当に問題が存在しているのか、顧客は課題を抱えているのかどうかという点です。


次にプロブレムソリューションフィット(PSF)、1つめの顧客が抱えている課題に対し、解決策は適切かという点です。


それから3つめはソリューションプロダクトフィット(SPF)、解決策と提供するサービスや製品は適切かという点です。


最後にプロダクトマーケットフィット(PMF)、提供しようとしているプロダクトは本当に市場にフィットするのか?狙っている市場は本当に存在するのか?という点です。


それぞれ頭文字を取ってCPF、PSF、SPF、PMFと呼ばれることもありますので注意してください。 この検証に関して、よくある質問は「それぞれの検証はどのタイミングで行う必要がありますか?」というものです。これに関しては「検証開始はできるだけ早く、検証完了=実証は成長戦略に合わせて」という言い方が一つの回答になると考えられます。というのも、これらの検証が進む=サービスや製品の顧客獲得、つまり事業成長が進んでいるということになりますので、図のような成長曲線を描くためには必ず検証を経る必要があります。 


重要なのは、これらは「一つの仮説」から地続きであり、それぞれの派生仮説を検証していく活動であるという点です。新規事業創出とはまさに「仮説検証」の連続であり、それによる学習と改善がその本質であるということを理解することが大切です。



検証活動と顧客開発


新規事業創出において、検証活動と顧客開発は強い関連性があります。

こちらの図は、顧客獲得によって製品やサービスが成長する姿を示したものですが、このような成長曲線を描くためには、検証活動と顧客開発を同時に進めていく必要があります。



この図では、先にご紹介した4つの検証活動を進めていくうちに顧客を獲得し、プロトタイプやMVP(Minimum Viable Product)と呼ばれる最小限のプロダクトを作りながら、マーケットフィットを経てスケールを作っていく流れが表されています。このように検証活動と顧客開発の足並みを揃えていくことは、新規事業の成功率を高めていくためにも非常に有効であると考えられます。



イノベーター理論とキャズム理論


ではここからは、成長と顧客開発の足並みを揃えるための思考材料として、「初期ターゲット」と「成長ターゲット」について考えていきましょう。


製品やサービスが多くの顧客に利用されるには、そもそも「見込み顧客の数」が重要になります。たった100人の顧客のために製品を開発することは、初期投資コストを回収できないばかりか、製品やサービスを維持していくコストも賄えない可能性があります。しかしながら最初から1,000,000人の顧客を想定した製品やサービスを考え始めてしまうと、顧客像がぼやけてしまい検証活動がうまくいかず、中途半端なものとなり、誰にも使われないという結果になりかねません。



そこで推奨したいのは「段階を踏んだターゲティング」のアプローチです。これは様々なセグメントの中から、もっともニーズが強く課題を抱えている顧客から製品やサービスを提供し、ノウハウを蓄積し強みをつくり、それらを基盤により大きな成長ターゲットへ展開していくというアプローチです。


段階を踏んだターゲティングを別の理論に当てはめて考えてみましょう。ここではイノベーター理論とキャズム理論についてご紹介します。


「イノベーター理論」とは、消費者を5つの層に分類することにより、新しい商品やサービスがどのように市場に普及していくのかを分析した理論です。市場に普及するためには、全体の16%にあたる、新しいものを受け入れやすい人たちに浸透することがカギだとしています。5つの顧客層をイノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードと分類し、消費者全体・顧客全体に占める割合を下記のように定義しています。




「キャズム理論」とは、導入期で成功した製品が、成長期において様々な制約条件に負けて溝(キャズム)に落ちて消えていくという現象を捉え、キャズムを乗り越えるためのマーケティングアプローチを示した理論です。イノベーター理論と同様の分類を用いて説明されます。



先に説明した「初期ターゲット」はここでいう「イノベーター」「アーリーアダプター」、「成長ターゲット」は「アーリーマジョリティおよびレイトマジョリティ」として考えることができます。


イノベーターという初期ターゲットを相手にサービスや製品を提供している段階ではサービスの価値や機能は、顧客の課題に対し解決策がフィットしているかどうか、よりフィットさせるにはどうすべきかを検証しながら改善しているフェーズです。B2Bであればイノベーターとなりうる企業の名前が出ているかどうか、顧客の顔が見えるかどうかが重要です。まずは1社目の獲得と実績づくりに注力する必要があります。


そこからアーリーアダプターを経て、アーリーマジョリティという成長ターゲットに移行する際に重要になるのは市場にフィットしているかどうかという観点です。潜在的な顧客が存在するかどうか、存在するとしたらどこにいるのか、マーケティング活動としてどのような訴求が有効なのかを、定量調査を元に洗い出しテストを繰り返しながら市場にフィットさせていきます。


新規事業開発においてはこのように初期ターゲットから成長ターゲットの検討、またそれらをつなぐ成長シナリオやストーリー構築をぜひ取り入れてください。



顧客開発・成長シナリオ事例:Facebook


ここまで説明した「初期ターゲット」「成長ターゲット」に関して、FacebookとAamazon、2社の具体事例をご紹介いたします。 


まず、2023年時点で約30億人のユーザーを抱える世界最大のSNS、Facebookの成長ストーリーについてです。Facebookは創業者のマーク・ザッカーバーグがアメリカハーバード大学に在籍中、学内の交流サイト、小さな実名制コミュニティとしてスタートしました。大学というフィジカルに交流できる範囲における実名制のメリットが優位性となり全米の大学に広がっていきました。そこから拡張準備期間を経て一般利用者に解放し、SNS全盛期であった時代背景も手伝って一気に世界中に広がっていきました。


ここでの「初期ターゲット」はザッカーバーグ氏が所属していたハーバード大学の学友、コミュニティ参加者たちであり、他大学の学生および一般利用者は「成長ターゲット」と捉えることができます。現在でもfacebookの優位性である「実名制」は初期ターゲットから成長ターゲットを経ても変わらず、その価値や強みを保持するためにリスク管理やガバナンス・開発体制構築などを経て市場拡大に至った、というストーリーがあります。


顧客開発・成長シナリオ事例:Amazon


つぎにAmazonの成長ストーリーをご紹介いたします。


Amazonはアメリカ・シアトルに本拠地を持つインターネット経由の小売を主業とする企業です。創業者であるジェフ・ベゾス氏は1993年ごろ電子商取引の年間成長率を2,300パーセントと予測し、あるインターネットの将来についてのレポートを読み、オンラインで販売できる20種類の商品のリストを作りました。



そこからもっとも有望と思われる5種類の商品を絞り込んだのち、書籍を主要商材として選択、自身の事業をオンライン書店にすることを決定します。ここからの成長戦略としてAmazonのロングテール理論は有名です。これは「書籍」という商品の特性を活かした戦略であるため全ての商材に当てはまるものでないことにご注意ください。


オンライン書店としてのAmazonの初期ターゲットは、研究者や学者、エンジニアや医師などであり、彼らが求める入手困難な専門書を扱うことで事業を広げていきます。そこから検索機能、レコメンド機能を整備し、商品数を拡張、商品種類を拡張...といった形で一般顧客へ展開していきました。Amazonの成長ストーリーの中で最も重要だったのはクレジットカードの登録という当時のEC(Electronic Commerce)における最大ハードルを超えることでした。そのハードルを越えさせるための強い顧客ニーズの発見が重要だったのです。そのハードルを越えるだけの強い痛みを抱えた顧客が、入手の難しい専門書を求める研究者やエンジニアといった専門性の高い職種の人たちだったというわけです。


こうした事例から学べるのは、初期ユーザーによって学習し成長ユーザー獲得に向けた基盤をつくるストーリーの重要性です。ぜひ新規事業開発の際に検討してみてください。


次回:CPF / カスタマープロブレムフィット

次回は「CPF / カスタマープロブレムフィット」についてご紹介させていただきます。


 

【参考書籍】

・秦充洋『事業開発一気通貫 』日経BP出版、2022年

・北嶋貴郎『新規事業開発マネジメント』日本経済新聞出版、2021年


・クレイトンMクリステンセン『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』ハーパーコリンズ・ ジャパン、2017年

・アッシュ・マウリャ『リーンスタートアップ成長戦略』 日経BP出版、2017年

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