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【プロブレムソリューションフィット#02】ニーズ検証とプロトタイプ

本シリーズでは3回に渡って、新規事業創出における顧客開発の検証活動、プロブレムソリューションフィットに向けた取り組みについてご紹介いたします。


・新規事業創出について検討したいが、どこから始めればいいかわからない

・新規事業チーム内の共通認識を作りたい

・新規事業創出にあたる検証活動を理解したい


といった方々のお役に立てますと幸いです。


本シリーズ・新規事業創出におけるプロブレムソリューションフィットに関する記事の一覧



ニーズを検証する取り組み

ここからは具体化した提供価値をもとに、検証活動を行っていきます。

ここで検証しなければならないポイントは下記の通りです。

 

1つめは、カスタマープロブレムフィットで定義した課題とソリューション、つまり提供しようとしている製品やサービスの価値が合致しているかどうか。 2つめは、ソリューションや提供価値自体にニーズがあるかどうかです。 この2点は混乱しやすいので注意してください。



新規事業の創出においては、ピボットと呼ばれる事業自体の方向転換をうまく行うという観点も重要です。ピボットについては後ほどの動画でご紹介しています。 検証の結果を間違って認識してしまうとその方向転換に失敗してしまう危険性があることに注意しましょう。


ここからの検証はプロトタイプを用いた活動が主体となります。


プロトタイプを用いた検証活動

ではプロトタイプを用いた検証活動について見ていきましょう。プロトタイプは「原型」や「試作品」を意味し、新規事業創出においては主に、プロブレムソリューションフィット、ソリューションプロダクトフィットにおける検証活動に活用されます。


下記図のようにプロトタイプを中心に顧客理解と顧客検証を進めていくイメージです。 この時点で検証すべき内容を押さえておきましょう。 



①カスタマープロブレムフィットで定義した課題とソリューションと提供しようとしている製品やサービスの価値が合致しているかどうか。 ②ソリューションや提供価値自体にニーズがあるかどうか。

では、これらを検証するためのプロトタイプ作りに進んでいきましょう。


プロトタイプ作りのポイント


プロトタイプ作りのポイントは下記の4点です。



1点めは、繰り返し作れること、低コスト、スピーディーに作れることです。先ほど見ていただいた図のようにヒアリングを重ねながら検証していきますので、繰り返し修正できること、素早く早く作れることはプロトタイプの検討には非常に重要です。


 2点めは、なるべく多くのパターンを作成して比較することです。チーム内でのイメージのすり合わせはもちろん、多くのパターン出しによる価値の磨き込みや新たな発見、ヒアリングの際に幅を広げることが可能になります。


 3点めは、具体的なシーンやベネフィットを伝えられているかどうかです。これはソリューションがない状態がビフォア、サービスや製品が導入されジョブをクリアしペインが取り除かれた状態をアフターとして見せることが有効です。 


4点目は検証すべき仮説に合致しているかどうかです。 プロトタイプを用いた検証活動に活用できるシートとして「プロトタイピングキャンバス」というものがあります。日本語に訳したテンプレートを準備しておりますので、そちらもぜひご活用ください。


プロトタイピングキャンバス

さまざまなプロトタイプ


プロトタイプは目的や用途に応じて様々なものがあります。検証内容や検証スタイルに合わせて効果的に使い分けができると良いでしょう。ここでは、プロブレムソリューションフィット段階の検証活動において有効なプロトタイプをご紹介していきます。 


1.ストーリーボード

1つめはストーリーボードです。製品やサービスの顧客体験をイラストや画像を使ってストーリー化する手法です。製品やサービスを通じて提供する価値や体験、それによって得られた感情、メリットなどを軸に表現します。ストーリーボードを用いた検証を行う際は、製品やサービスが存在しない場合のビフォア、製品やサービスを導入、利用したアフターまで準備して、表現すると良いでしょう。



2.ビデオプロトタイプ

 2つめはビデオプロトタイプです。製品やサービスのコンセプトや提供価値、体験を動画で表現します。現代では動画作成ツールが普及しており、誰でも高品質な動画を作成できるようになりました。短い期間でより多くの検証活動とフィードバックを得たい場合にはビデオプロトタイプを作成し、youtubeの非公開設定で検証相手に送付するなどの効率化も可能です。 


ビデオプロトタイプの事例としては、2012年のdropboxのものが有名です。Dropboxがどういうプロダクトなのかを、主に技術者ではない顧客を対象として、プロダクトがどう機能するのかを見事に伝えています。一般的なプロモーションビデオほどの予算をかけて作り込まずとも、このような動画でニーズの検証が可能なことがわかります。Dropboxはこうしたプロブレムソリューションフィットでの検証を目的としたビデオプロトタイプによって後続のソリューションプロダクトフィット、プロダクトマーケットフィットの検証活動までを網羅し、世界的サービスとして普及することができました。当時のビデオプロトタイプは現在でもyoutubeで見ることができますので、ぜひご覧ください。 



また、近年ではサウジアラビア王国で進む大規模なスマートシティプロジェクト「The Line」のビデオプロトタイプが話題になりました。大規模なプロジェクトへの出資者を集める場合にも、こうしたビデオプロトタイプは有効です。



ビデオプロトタイプは以降の検証活動において非常に有効な手段ですので、ぜひ取り入れてください。 


3.チラシやWebサイト

3つめはチラシやWebなどでのランディングページです。チラシやランディングページは静的なメディアですので、顧客が受けるメリットをわかりやすく記載し、製品やサービスの機能や特徴を端的に説明するのに適しています。Webサイト・ランディングページの場合は問い合わせボタンなどを設置しておくと、検証段階で見込み顧客の獲得ができるなどの利点があります。 


そのほかにもさまざまなプロトタイプがあります。仮説や検証の目的に適したスタイルを選択し、制作と修正を重ね検証を進めてください。


次回:プロブレムソリューションフィットに向けたヒアリング


次回は「プロブレムソリューションフィットに向けたヒアリング」についてご紹介させていただきます。


 

【参考書籍】

・秦充洋『事業開発一気通貫 』日経BP出版、2022年

・北嶋貴郎『新規事業開発マネジメント』日本経済新聞出版、2021年

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