Hello, 辻原です。 2022年末よりCOVID-19による行動制限が緩和され、2023年は国境や地域を超えた交流が再開できる兆しが見え始めてきました。さらに昨年からの円安の影響もあり、国内ではグローバルでのビジネス展開の機運も高まっており、今年は多くの企業が海外へのビジネスリサーチをスタートさせると考えられます。
今回はそのような機会に活用できる「フィールドワーク」について解説をまとめていきたいと考えています。フィールドワークは事業展開での活用のみならず、デザイン思考をスタートする研修にも適しています。最後に活用シーンについてもご紹介いたしますので、是非最後までご覧ください。
フィールドワークとはなにか?
フィールドワークとは一体どのようなものでしょうか?一般的な解説としてwikipediaより引用してみましょう。
フィールドワーク(英: field work)は、ある調査対象について学術研究をする際に、そのテーマに即した場所(現地)を実際に訪れ、その対象を直接観察し、関係者には聞き取り調査やアンケート調査を行い、そして現地での史料・資料の採取を行うなど、学術的に客観的な成果を挙げるための調査技法である。地学や地理学では巡検ともいう。
フィールドワークは日本語で「現地調査」と訳されることがありますが、その字義の通り、テーマに即した場所(現地)で調査を行う場合に実施される調査手法であると定義して良いと考えています。
フィールドワークはもともと学術的な研究手法として用いられてきたもので、主に人文科学、自然科学、医学の領域で発達してきました。現在ではデザイン思考を中心に事業開発、マーケティング、研修等々の領域に転用されています。
今回はデザイン思考・事業開発におけるフィルドワークについてご紹介いたします。
デザイン思考のプロセスにおけるフィールドワークの位置付け
デザイン思考のプロセスについてはさまざまな整理がありますが、今回はd.seedモデルをベースに展開しご紹介させていただきます。(モデルはイテレーティブプロセスであることを前提とします)
まず、フィールドワークによる観察を起点にした課題解決までのプロセスは下記のような図で表すことができます。このプロセスにおいて、フィールドワークでは主に「①対象となるユーザーや環境・事象の観察」を目的としています。
しかしながらここで注意したいのは、フィールドワークによる観察の成果は②③へ接続する必要があるため、単なる観察ではなく「③ユーザー行動や事象要因の推測」=仮説を構築することを目指す必要があるという点です。つまり、「成果を出すフィールドワーク」という観点においては①②③を取り出したイテレーティブプロセスの設計および実施が求められることを理解しなければなりません。
フィールドワークにおける観察の目的
つぎに、フィールドワークの目的をより深く理解していきましょう。フィールドワークの位置付けや役割は課題解決の入口となる「観察」にあります。しかしながらフィールドワークを経て、上述した①〜③で獲得すべき成果とは一体どのようなものでしょうか。
まずは「観察」について理解を深めていきましょう。観察は定性的データを収集する手法として位置付けられ、他の収集手法と比較すると下記のような特性を持ちます。観察は主に「参与観察」「行動観察」の2つに分類され、フィールドワークにおける観察が対象とするのはこの2種となります。
さらにこの「観察」および定性調査が目指す「問題発見」は下記のように表現できます。(※実際のプロジェクトでは定性・定量両面の調査実施が必要です。)
つまりフィールドワークでの観察により獲得すべき成果とは、潜在的なニーズやまだ見えていない課題の発見であるということができます。(先のd.seedモデルを用いた解説においても同様)そのため、フィールドワークによって「顕在的な情報」のみしか得られないケースは成功事例とは言い難く、後続プロセスに支障をきたす可能性があることを注意しなければなりません。
※フィールドワークは観察のみでなく、現地の人への聞き取り調査や、文献調査、アンケート調査なども含まれることを注意してください。ここまでの説明はエスノグラフィック・フィールドリサーチに比重をおいたもとなっております。
フィールドワークの手法
では、そうした成果を獲得するためのフィールドワークはどのように設計・実施するのが良いでしょうか?ここからはフィールドワークの手法やイテレーティブプロセスについて解説していきます。
フィールドワークプログラムは現地での観察のみならず、そこで得た情報を補完しより深く理解するため、同時に「デスクリサーチ」や「ヒアリング」を組み合わせて実施する必要があります。
フィールドワークプログラムではこうした活動とアイディエーション・プロトタイピングを繰り返しながら、獲得した仮説を検証することを目指します。プロジェクト当初に発想した仮説は立証されておらず、いわゆる「黒い仮説」ですが、サイクルを回しながら「仮説の確からしさ」を高めていく形で行うことが理想的です。
そのため、フィールドワークプロジェクトにおいては複数日をかけ、下記を効果的に組み合わせながら行う必要があると考えられます。
・観察フィールドワーク ・アイディエーション ・デスクリサーチ(文献調査) ・ヒアリングやインタビューなどの聞き取り調査
これらを繰り返しながら課題解決領域の仮説を発見し、後続の解決プロセスへ接続することを目指します。
フィールドワークが活用できるケース
こうしたフィールドワークはビジネスのさまざまな領域で活用することが可能です。
・海外や地域での事業開発
・事業周辺の環境調査
・海外や地域での事業ローカライズ
・マーケティングや新規出店調査
・デザイン思考やそのほか研修
・チームビルティング研修
等々…フィールドワークはデザイン思考のみならず事業開発や育成の基盤となる手法です。この記事が実施のお役にたてますと幸いです。
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