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【DXとビジネスモデル#01】DXとビジネス

本シリーズでは5回に渡って、DXとビジネスモデルについてご紹介いたします。


・新規事業創出について検討したいが、どこから始めればいいかわからない

・デジタル戦略を検討したい

・DXの基本的な概念を理解しておきたい


といった方々のお役に立てますと幸いです。


本シリーズ・DXとビジネスに関する記事の一覧



本稿は、小野塚征志著『DXビジネスモデル 80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略』インプレス、2022年を参考に、DX理解&事業設計の手引きとして、本書の一部をわかりやすい説明を加え整えたものとなっております。本稿と合わせ書籍もお買い求めいただき、ぜひ体系的な学習へステップアップしてください。




DXとは何か

DX(Digital Transformation/デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用したビジネスモデルの革新および産業革命を指す言葉です。


IT導入による業務効率化、電子化による生産性の向上などは単なるデジタル化にすぎず、DXとはデジタルの力を用いてビジネスを変革することが本来的な目的であることに注意してください。経済産業省では2018年12月に発表した「DX推進ガイドライン」において、DXを下記の通り定義しています。 



こうした定義からもわかるように、DXの本質的な目的は「変革による競争優位性の確立」であり、「デジタル化」はそのための手段として理解すべきです。単なるデジタル化だけでは競争優位性の確たる構築には至りません。これまでと異なる手法を用いた価値提供を行う新たなビジネスモデルの確立が求められます。


DXの4形態

DXは単なるデジタル化ではなく、デジタル技術を活用したビジネスモデルの革新であることは先に説明した通りです。しかし、現在の事業環境ではデジタル化なくしてビジネスモデルの革新は成し得ません。DXには4つの進化形態があり、順を追って進めていく必要があります。 


まず1つ目の形態は「デジタイゼーション」です。デジタル技術を活用することでビジネスプロセスをデジタル化し、業務の効率化や生産性の向上などにより収益力を強化することを目指します。デジタイゼーションの代表例は「ペーパーレス化」「RPA(Robotic Process Automation:機械による自動化)」「オンラインツールの活用」最近では「AIの活用」などが挙げられます。デジタイゼーションでは「人がやったほうがいいこと」「機械やAIに任せた方がいいこと」の見極めが重要であるといえます。 


2つ目の形態は「デジタライゼーション」です。デジタイゼーションで実現したビジネスプロセスのデジタル化を発展させ、モノ売りからコト売りへの転換 、プラットフォームの構築や再編などによるビジネスモデルの変革を目指します。デジタライゼーションでは、収益を得るための方法や差別的優位性の源泉などを変化させ、競争力を向上させることが望まれます。自動車メーカーが自動車というハードウェアの開発のみならず、移動という価値を提供するMaaS(Mobility as a service)を中核とした会社に変化しようとしているのは、デジタライゼーションの典型例であるともいえるでしょう。こうしたビジネスモデルの変革によって、マネタイズスキーム(収益を得る仕組み)の転換を促すことが重要です。デジタライゼーションでは、デジタル化を切り口にビジネスの可能性を広く探究することが求められます。 


3つ目の形態は「コーポレートトランスフォーメーション」です。DXを通じて「誰に・どのような価値を・どうやって提供する企業を目指すか」を再考し、企業としてのアイデンティティを進化させることを目指します。例えば自動車メーカーが取り組むMaaS(Mobility as a service)では、自動車のみではなく移動に関する広範囲の仕組みを提供することが目指されています。自動車のシェアリングをはじめとし、鉄道や飛行機といった移動手段との連携が可能になり、移動の利便性を提供するプラットフォームを構築することができれば、ステークホルダーや顧客に対しより大きな価値を提供することができるようになります。そうすることで既存事業であった「自動車の製造」はごく一部となり、事業ポートフォリオの見直しや競争優位性の変化が起こり、企業自体の変革につながっていくのです。コーポレートトランスフォーメーションでは、誰にどのような価値を、どのような手段で提供する企業を目指すのか、その実現のシナリオを描くことが重要です。企業としてのアイデンティティを再定義することがコーポレートトランスフォーメーションの起点になると言えるでしょう。 


4つ目の形態は「インダストリアルトランスフォーメーション」で、DXの最終段階であるといえます。3段階目のコーポレートトランスフォーメーションを実現した企業が、社会生活や経済活動・生産活動に革新をもたらし、業界全体のメカニズムが再構築され、より豊かで快適な社会になることが期待されています。自動車業界の例を続けると、自動車メーカーがMaaSの実現に成功し、企業としてのアイデンティティや提供価値を「自動車の開発」から「移動サービス」に変え、自動車の所有が「一家に一台」から「都度利用するもの」に変化した場合、暮らしや生活の快適性・利便性は高まりますが、自動車の販売業者は不要になってしまいます。さらに、自動車の電動化が進めば部品数の減少による生産体制、ガソリンスタンドの不要化など業界全体のトランスフォーメーションが求められるようになります。


つまりDXは、企業単体の変革のみならず、長期的には業界全体のメカニズムを変革してしまうほどのインパクトをもたらすということです。インダストリアルトランスフォーメーションをリードすることができれば、企業として大きな成長と飛躍を実現することが可能になります。 


このようにDXには4つの形態があることに留意し、戦略を描くことが重要です。目先のデジタイゼーションだけをターゲットにビジネスの推進を行うと、将来に繋がらない技術へ投資を行なってしまう可能性があります。目指す姿を具体化し、その実現に向けたDX戦略と取り組みが重要です。



従来型のビジネスとDX時代のビジネス

従来からあるビジネスの多くは、製品やサービスを提供し対価を得るのが基本です。例えば農林水産業や製造業などはモノを作ること・売ることで対価を得るビジネスの代表例であり、卸売業や小売業は販売すること、飲食業や運送業・通信事業はサービスの提供を主とする産業の代表例、として説明できます。


日本経済はこのような第一次産業、第二次産業、第三次産業へと主体が移り変わることで発展し、現在では全就業者の約7割以上が第三次産業に携わっています。DXによる変革はこの産業構造の転換を一段進めるものになると予想されており、多くの企業がDX時代ならではのビジネスによって新たな産業の創出を目指しています。 


DX時代のビジネスでは、製品やサービスの提供だけでなく、その取引を支えることを主とするビジネスが増えることが予想されています。前章でご紹介したように、DXは「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「コーポレートトランスフォーメーション」「インダストリアルトランスフォーメーション」と進んでいきます。


これらのトランスフォーメーションによって、日常的なモノやサービスの消費や体験が変わり、データが流通しビジネスモデルが変化すると、起点となるモノやサービスの提供手段はさらに多様化していきます。するとそうした多様な提供手段を支えるためのビジネスの必要性や重要性が高まっていきます。ここにDX時代ならではのビジネスの可能性が秘められていると考えられます。 


DX時代のビジネスは主に4つに分類されます。 取引機会を拡大する「場を創出するビジネス」業界全体の構造を変革する「非効率を解消するビジネス」市場の成長と社会の多様性を促す「需要を拡大するビジネス」企業の価値を高める「収益機会を拡張するビジネス」です。 ここからはそれぞれを詳しく紹介していきます。


次回:DXによる価値創造①取引機会を創出し拡大する

次回は「DXによる価値創造①取引機会を創出し拡大する」についてご紹介させていただきます。



 

【参考書籍・文献】

・経済産業省『DX推進ガイドライン』2018年 ・小野塚征志『DXビジネスモデル 80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略』インプレス、2022年


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